産経新聞 11月5日(水)9時1分配信

ミンクルと生活習慣病の関係(写真:産経新聞)(スクリーンショットより)
■将来の治療薬開発視野に
毎日の食事で、過剰に摂取した脂肪はどこへ行くのか。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の人の場合、内臓脂肪の量が限度を超えると、「ミンクル」という分子を介して脂肪組織の線維化が起こり、糖尿病など生活習慣病の原因につながる恐れがあることが日本発の研究で示された。脂肪組織の性質に焦点を当てた画期的な研究成果で、メタボの予防・改善に向けた治療薬の開発につながることが期待される。(大家俊夫)
◆マウスの実験で証明
ミンクルの性質についてはこれまで、生体の感染防御に中心的な役割を果たすことが分かっていた。しかし、今回はミンクルを介して肥満の脂肪組織の線維化につながる別のメカニズムが解明された。研究したのは東京医科歯科大大学院医歯学総合研究科の菅波孝祥(たかよし)特任教授と小川佳宏教授のグループだ。同研究は9月、英国の科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」(電子版)に掲載された。
実験では、肥満の内臓脂肪組織にあるミンクルを取り除いたマウスとそうでないマウスの2種類に高脂肪食を与えて太らせたところ、前者のマウスは後者に比べ、肝臓への脂肪蓄積や糖代謝異常(血糖値の異常)が軽減されたことが示された。
この実験を踏まえて、「肥満の人の内臓脂肪の量が限度を超えると、ミンクルを介して脂肪組織の線維化が起こり、脂肪が肝臓に蓄積して脂肪肝になる。その結果、脂質代謝異常(コレステロール値の異常)などを経て、糖尿病になったり、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に発展したりする」というメカニズムを突き止めた。
◆負のサイクル防止
メタボや肥満症の人は、ミンクルが負のサイクルに向かって機能しないように、生活習慣を改善することが重要となってくる。
一つは食事の工夫だ。脂肪は就寝中にたまりやすい。このため、就寝前の食事や間食を避けることを心がける。また、油分の多い食事は減らし、油の種類も不飽和脂肪酸のオリーブオイルなどに切り替えることが推奨される。
もう一つは運動だ。メタボの人は体が重く感じられる傾向にあり、エスカレーターや車での移動に偏りがちだが、日常生活の中で少しでも歩く距離を増やしていく工夫が大切になってくる。菅波特任教授は「歩けば歩くほど、体内の脂肪分の燃焼が促進され、脂肪組織の線維化を防ぐことができる」と説明する。
ただ、現実にはひざに痛みを抱えるなどの理由で運動療法が難しい人もいる。メタボや肥満症の人に対する効果的な治療薬がいまだ少ない中で、共同研究者の小川教授は「日本人は欧米人に比べ、軽度の肥満でも脂肪が蓄積しやすい。ミンクルを標的とした治療薬の開発が日本人の肥満を救うことになる」と意欲をみせている。
■「肝臓の脂肪蓄積」 CTでチェックを
脂肪にはいくつかの種類があり、腹部の筋肉の外側にあってつまむことができるのが皮下脂肪であり、大腸や小腸のまわりについているのが内臓脂肪。皮下脂肪や内臓脂肪の貯蔵量が限度を超えると、毒性の高い「異所性脂肪」が肝臓などに蓄積される。
肝臓に必要以上に脂肪が蓄積しているかどうかはCT(コンピューター断層撮影)や腹部エコー検査で一定のレベルは調べられる。菅波特任教授は「肥満の人は検査した方がいい。早期の段階で分かれば、糖尿病などのさまざまな生活習慣病の予防になる」と語っている。
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最終更新:11月5日(水)15時6分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141104-00000567-san-hlth
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