肥満は認知能力を低下させる?

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2014年11月20日(木)18時0分配信 ナショナルジオグラフィック

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 アメリカでは国民の3分の1以上が肥満といわれる。肥満は心臓に負担をかけるだけでなく、年をとってからの認知能力にも深刻な影響を及ぼす可能性がある。Photograph by Rogelio V. Solis / AP

 体重が増えるほど、脳が収縮する可能性がある。60代を対象とした8年におよぶ最新の研究から、肥満体の被験者では、大脳辺縁系の一部である海馬が1年で2%近く収縮していることが明らかになった。その収縮率はアルツハイマー病に匹敵する。

 標準体重の被験者では、記憶を司る海馬の収縮率が肥満体の被験者のおよそ半分。11月18日、首都ワシントンD.C.で開かれた北米神経科学学会の記者会見で研究結果が発表された。

 これまでの体重と脳に関する研究のほとんどは中年層を対象にしてきたと、キャンベラにあるオーストラリア国立大学の神経科学者で研究の共著者、ニコラス・チェルビン(Nicolas Cherbuin)氏は語る。

 今回の参加者は実験開始時点で60~64歳と、高齢者の肥満と認知能力低下の関連性を裏付ける証拠を提供した。年をとるほど肥満になりやすいアメリカ人にとって、冷静に受け止めなければならないニュースである。

「年をとり退職したから関係ないと思うかもしれないが、安心してはいられない」とチェルビン氏は言う。

◆ウエストが太くなると、海馬は細くなる

 チェルビン氏と同僚らは、磁気共鳴画像法(MRI)を使って60代のボランティア400人の脳を調査した。実験当初から肥満の被験者の海馬は、標準体重を少し超えた被験者のものより小さかった。(米国疾病予防管理センター(CDC)の指標では、身長175センチで体重が77~92キロあれば太り過ぎ、92キロを超えると肥満と見なされる)。

 また、肥満の被験者の海馬が最初から小さかっただけでなく、細身の被験者よりも速く収縮していくことが明らかになった。その収縮率は、記憶喪失や気分変動、集中力と意思決定力の低下につながるとチェルビン氏は推測する。

◆二重苦

 太っているとなぜ脳が収縮するのか。その仕組みはまだ解明されていない。1つの可能性として、脂肪細胞から浸出する免疫系化学物質が考えられる。脂肪細胞が増えると、これらの化合物の量も増え、海馬で細胞死を促進しつつ細胞誕生を抑制するという二重の影響が現れる。

 肥満と認知能力低下を関連付けた動物実験に照らし合わせると、今回の研究結果は信頼性があると、ピッツバーグ大学の神経学者で研究には参加していないジュディ―・キャメロン(Judy Cameron)氏は述べる。

 CDCによると、アメリカ人の実に3分の1以上が肥満である。「体重を減らし、もっと体を動かすことで、神経変性疾患を予防できる。このことをより多くの国民に知らせる必要がある」とキャメロン氏は言う。

 チェルビン氏もこれに同意し、「いま対策を打たなければ、20年、30年先に大きな代償を払うだろう」と述べている。

Traci Watson for National Geographic News

http://news.nifty.com/cs/world/worldalldetail/ng-20141120-20141120003/1.htm

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