2014年11月2日(日)20時45分配信 All About
女性なら誰しも、いつまでも美しくありたいと思うものです。妊娠前なら思いっきり自分のために美を追求できるけど、妊娠するとみるみるお腹も大きくなって体重もすごく増えてしまう。産後に体型は本当に元に戻るのだろうかと心配する方はいらっしゃると思います。
巷では小さく生んで大きく育てるのが安産でいいとか、妊娠中の体重は+8kg以下に抑えなければいけないとか耳にすることもあります。経験しないうちから妊婦って大変なんだなと思ってしまったり、産後もすぐ体型を戻すことがいいと思いこむ傾向にあり、何かと我慢のイメージをもってませんか?
その情報を鵜呑みにするのはちょっと待ってください。妊娠中の体重管理に関する新しい説をご紹介したいと思います。
■妊婦ダイエットの危険性
妊娠中の体重制限は、1990年頃から広く認識されてきました。病院や産院で体重制限が厳しくなったのは、ここ10年くらいのことなんです。その間出産した方で、体重の増えやすい体質だった妊婦さんにとっては、とにかく体重制限でつらい思いをしたという方も少なくないと思います。しかし悲しいことに、その常識とも思われていた体重増加+6~8kgがベストということがここ数年で覆されています。
それは、妊娠前・妊娠中の女性の食生活が胎児に及ぼす影響は大きく、妊娠中のダイエットなどで母体の栄養状態が悪くなり、栄養不足のため低体重(出生体重2500g以下をいいます)で生まれてきた赤ちゃんは、胎児のうちから病気を発症してしまい、将来的に高血圧や心臓病、糖尿病などの成人病を発症するリスクが高いのです。
これは「成人病胎児期発症説」と呼ばれ、英国サウザンプトン大学医学部のデイヴィッド・パーカー教授が提唱している説です。胎児期に栄養不足だと血糖値が下がりすぎてしまって、胎児が一時的に飢えを経験するので血液中の栄養素が足りなくなります。
そうすると、少しの栄養をたくさんストックしておこうという体質が胎児のうちからできあがって生まれてくるのです。ですから、今では小さく生んで大きく育てることは肥満体質を作ることにもなり、むしろ危険な考え方とされているのです。さらに、出生時体重が大きいほど、生涯とおして最も健康を保てることがわかってきました。そういったことから、最近では私たちアジア人の場合、妊娠中の体重は8~12kg増えるのが平均ということが認識されつつあります。
そもそも体重は増えない方がおかしいんです。臨月のころには赤ちゃんだけで3kg、羊水が500cc、胎盤も600g増えます。また、胸も2カップくらいアップして両方で1kgくらい大きくなります。それからどうしても必要となる皮下脂肪も貯蔵します。そう考えたら5~6kgしか増えないことのほうが科学的に無理があります。
あくまでも太るのではなく、スタミナストッカーとしての脂肪を蓄積しているのです。妊娠中はただ、お腹の中に赤ちゃんがくっついているのではなく母体全身で育てるための自動育成装置みたいなのが働いている状態。そうしてみれば、それはその人のベストな体重といえます。
ただし、もともとが肥満体質という方は+8kgくらいにおさえて、逆に痩せすぎの方は8~12kgくらいは増やそうという方向でいいでしょう。オランダなどは今でも多い時で妊婦の3分の2が自宅出産する国ですが、8kg未満しか体重が増えなかったらハイリスク群にカウントされて自宅出産できないのです。
■妊娠はもっとおおらかに考えていい
妊婦の体重増加は太っているのではなく、赤ちゃんに良質の血液を送って3kgで人生を出発できるサイズまで、母体が無意識に栄養を与えて育てています。ゆったりとした気持ちで過ごせるように、エストロゲンという女性の代表的なホルモンが脂肪と卵巣から分泌されます。子供がかわいい、守りたいと思う気持ち、育てるという心は、じつは女性ホルモンが分泌されるからそう思うようになる部分もあるのです。ある程度脂肪を貯蓄していないと、ゆったりとした気持ちにもなりにくいです。守りたい、包みたい、というほんわかと柔らかい気持ちになるというのもエストロゲンの作用なのでしょう。
妊娠中に、脂肪を貯蓄することはスタミナをつけるということで、産後の育児に影響します。妊娠中に体重に気をつけて、産後すぐ戻すことがいいという思いこみは心のスタミナ不足になります。産後、赤ちゃんが泣いていても「どうした? 抱っこかなー?」というよりも「もう! なんで泣いてるの!」みたいになりかねません。おっとり、ゆっくりできるように産後半年間は戻らなくて普通です。2kgくらい体重はアップしている方が育児のためにはちょうどいいんです。
産後太ってしまって戻ってない人が周囲にいるとしたら、恐らく母乳をあげていないのではないでしょうか? 母乳をあげることによって絶対に体重は減るから大丈夫。一回授乳するとかるくお茶碗一杯くらいはお腹がすきます。母乳をあげたら痩せる人もいるくらい。母乳をあげるとどんどん痩せるので、妊娠中に増やしておかないと、ガリガリになってスタミナのないママって結構いるんです。髪の毛も抜けやすくなったり、肌もかさかさになったりしてしまいます。
いずれにしろ、見た目の美容のことだけ考えて、無理をして体に栄養を送らないことは体に毒なので注意しましょう。
■ウォーキングの習慣をつけましょう
食べ過ぎたなと思ったら、食ことの量を減らすのではなく、よく動くことです。妊婦にはウォーキングをよく勧められていますが、簡単にいうと出産にむけて骨盤ができてくるから。妊娠14週から骨盤を柔らかくするリラキシンというホルモンが出てきて、歩けば歩くほど、ちゃんとお腹を支えるためのお産に必要な骨格と筋肉ができてきます。
働く妊婦さんの方で、通勤に1駅~2駅分くらい歩く人はたくさんいます。不思議なことに、最初は30分でくたくたでも、続けていれば1時間以上も楽に歩けるようになります。心拍数が上がると全身に血液を巡るようになり、血行や新陳代謝がよくなります。歩き続けて30分くらいを1日2セットすると、かなり体力もついてくるし体調もよくなります。つわりの時期を除いて20週くらいからスタートするといいですね。15分以上歩き続けないと燃焼は始まりませんので注意してください。
また、床に落ちている物をとる時は、膝を曲げて腰を落として、体ごと持ち上がってくるように気をつけると、骨盤底の筋肉のトレーニングにもなります。ぞうきんがけ等もおすすめです。
【妊娠の基礎知識ガイド:大葉ナナコ】
http://news.nifty.com/cs/item/detail/allabout-20141102-20141102-4/1.htm
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