2014年8月4日(月)17時56分配信 ナショナルジオグラフィック
10月19日に最接近が予測されているサイディング・スプリング彗星(C/2013 A1)と火星の軌道。Illustration by JPL/NASA
火星と彗星との大接近まで、残り3カ月を切った。衝突の恐れはないものの、火星を周回するNASAの探査機が被害を受ける可能性がある。
10月19日、サイディング・スプリング彗星(C/2013 A1)が火星の前方すれすれをかすめて行く。接近距離があまりにも近いため、NASAは7月25日、火星探査衛星を守るための対策を含む臨時の計画をまとめたと発表した。
天文学者らは彗星の核が火星に直接衝突する可能性を否定しているが、塵を多く含み、地球に近い大きさのコマと呼ばれる雲は火星と直に接触すると予想され、その際の彗星の核と火星表面との距離は13万7760キロしかない。地球から月までの距離(約38万キロ)の半分にも満たない近さだ。
NASAの火星探査車キュリオシティとオポチュニティは地表にあるため被害を受ける可能性はなく、上空のショーをとびきり間近で観測できる見込みだ。一方で火星を周回する衛星探査機は、彗星がもたらす塵を弾幕のように受けて損傷する危険がある。細かな塵の粒子は時速20万1490キロもの速度で移動しており、探査機は事実上、砂を高速で吹きつけられるような状態になるだろう。
現在、NASAの探査機マーズ・オデッセイとマーズ・リコナイサンス・オービタ(MRO)のほか、欧州宇宙機関(ESA)との共同計画として火星探査衛星マーズ・エクスプレスが赤い惑星の周囲を回っている。今年9月末までに、4つ目の衛星探査機MAVENが火星の周回軌道に到達する予定だ。
彗星の動きをコンピューターでシミュレーションしたところ、彗星が火星に最接近してから約90分後、彗星が引くガスや塵の尾を探査機が20分間にわたって浴びる、最も危険な時間帯が発生することが分かった。このため、NASAは万一の場合に備え、危険な時間帯に探査機が火星の陰に隠れるよう調整する計画だ。
しかし、これほどの天体ショーを前に探査機が隠れているだけということはない。NASAは彗星接近の前後数日~数時間に、貴重な科学の知見が得られることを期待している。
専門家らは、サイディング・スプリング彗星はこれまで一度も内部太陽系に入ったことがないと考えている。それが事実であれば、この彗星は太陽系が形成されて間もない頃の手つかずの残骸であることを意味する。「凍りついた来訪者」である彗星を直に観察することで、地球を含む惑星の誕生時点にまでさかのぼるデータを集められるかもしれない。
◆地球からの観察はできる?
彗星は10月25日までに地球に最も接近し、太陽から約2億900万キロまで近づく。だが、そのときですら肉眼での彗星の観察は期待できない。
その代わり、アマチュアの天文ファンも専門家も10月19日に起こる宇宙のニアミスをはっきりとらえようと、天体望遠鏡で火星観測の予行演習を始めるのはまず間違いない。その頃には、火星は南西の地平線近く、射手座のそばに見られるはずだ。
Andrew Fazekas for National Geographic News
http://news.nifty.com/cs/world/worldalldetail/ng-20140804-20140804002/1.htm
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