医療と運動の違いを考えてみると、
医療の場合は、
・緊急度に伴う優先順位や期限がある(蘇生では5分間以内などもある)。
・病気やけがなどから元の状態へ戻すと、行うべき事が明確である。
運動の場合はそれとは異なり、
・期限が無い(競技選手は期限があるが、大抵は明確な期限が無い)。
・現状から発展させることなので、計画が建てにくかったり、目標があやふやになりやすい。
という違いがあると思います。
運動の場合は、緊急度が見にくいのと、また計画が明確でなくても、特段無理をしなければ危険度も低いので、好きな事だけを選ぶ事も出来ます。
しかし、競技選手のトレーニングや特定の目標に向かって身体の改善を図りたい場合には、このような選び方は適切ではないでしょう。
運動やトレーニングを通じて身体の変化を狙うには、時期や期限を明確に捉える事が重要と考えています。
例えば人間の成長の過程を、
「成長期(幼児期、少年期、成長期。通じて背が伸びている期間)」
「成人期(青年期、壮年期)」
「高齢期(前期高齢期、後期高齢期)」
と分けるとし、それぞれの段階で必要な事を行うのと、
また同じ年齢としても、
「導入期、発展期、円熟期」
程度に分ける必要があるでしょう。
また、その人の、運動経験や現在の健康状況等でも、適切なものを選ぶ必要があります。
健康状態を計るには、既往症やくすりの服用、生活習慣、血液分析値、体脂肪率、筋肉や骨や関節の状態などから見ますが、一般的な人ほど健康状態の幅が広く、
「本格的な運動をするのが初めて」という女性や、
「昔は高校球児だったから体力には自信がある」というメタボおじさんのような様々な人がおられます。
ウォーキングのような有酸素運動であれば集団指導もしやすいですが、本格的なトレーニングでは誰しも同じ内容で行うのは当然無理があります。
さらに、成長期や性差も含めて考えるべきでしょう。
私はこのように、
「全体を俯瞰しそれぞれの段階で必要なものを適切に行うこと」
が、あるべきトレーニング(身体の向上、訓練)の姿と考えています。
そのためトレーニングプランを組む場合は、競技選手とすると、
「最終的な目標は、○○のような選手になる事。
暫くの目標は、この技術をこうする事。
そのためには、ここをこう改善する必要がある。
だから今の時期は、このようなトレーニングをこの様に行う事が必要である」
というような組み方になります。
ビルディングやシェイプアップ、健康運動や高齢者の方の運動でも、取り組み方は全く一緒で、
ところが唐突に方法論から入る方が半分くらいおられる気がします。
「なぜこの段階でそれが必要なのか?」
という検討がないまま、
「これにはこのフォーム」「ウエイトリダクションはこうやって行う」というような、本来は全容を決めた後に選択すべき方法論が最初に来ている例を見かけます。
このような組み立て方だと、必要度から組み立てている訳ではないので、危険性が増えたり、効率が悪くなる可能性が十分に含まれます。
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