中高年のレジスタンストレーニングと血管とコレステロール

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 レジスタンストレーニング(以下RT)特有の生理的な変化として、
1、血圧が下がりにくい(上がるわけではない)
2、コレステロール値が高い位置を保ちやすい

 というのが上げられます(筋肉がどうこうってのはここでは取り上げません)。


 1番目は JATI の2009年総会で栄養研の宮地元彦先生のお話でお聞きしたもので、
「RTを止めて2週間くらい経つと血圧が下がってくるから、RTに伴うホルモン的な変化ではないだろうか。2週間という期間からして物理的な変化とまではいえないだろう」
「有酸素運動は、始めるとすぐに血圧が下がってくる傾向があるので、糖尿病のような血圧を下げたい場合は RT は積極的に勧めにくい」
というものでした。
(私の記憶の範囲で要約していますので、先生のお話と違っているかもしれませんがご容赦ください)。


 2番目は、これは私の感じているところなのですが、どうもコレステロール値がLDL、HDL ともに高い傾向にある様です。

 この対象者は、現役のスポーツ選手では無く、一般的な方が運動を再開される、ジョグはあまり興味ないから RT をする、ジムが近くにあるなどの理由で、RT を選ばれている方です。
 どちらかと言うと筋肥大(ビルディング)の目的割合が高いです。

 これらの場合、
・RT をする事によって上がったのか、それとも元々高い人が RT を好むのか。
・RT をするようになると、総合摂取カロリーが増えるので、摂取コレステロール値も比例して上がりやすい。
・しかし、コレステロールは通常体内合成が 75% くらいあるので、摂取が倍になったとしても大幅に上がるとは考えにくい。
・ただし同年齢中高年と比べると、血中中性脂肪値、コレステロール値は高いわけではなく、摂取量と勘案するとむしろ低いと言える(絶対値ではないです)。

という点が思い浮かびます。
そのためこの例については、RTが主原因なのかと言うと、まだ研究途中です。
 性差は調べていません。どちらかというと男性に偏っています。


 これら2点は絡んでいるのではないかと想定しているのですが、RT が主でトレーニングをされている方は、血圧やコレステロール値は一般的な例にそのまま当てはまらないのかもしれません。


以下、参照
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血圧に関してはこのような研究があります。

2003.09.22
【体力医学会速報】 筋トレの継続は動脈硬化を悪化させる?
抜粋
>筋トレが循環器系に不利な変化をもたらすメカニズムについては、本研究では明らかにされていないが、宮地氏らは、トレーニングの運動パターン(力の入れ方など)に対する動脈の適応の違いが関与している可能性を示唆している。
http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/267874.html


レジスタンス(筋力)トレーニングと動脈コンプライアンス
抜粋
>以上の結果から、有酸素性トレーニングを同時に行なうことで、高強度筋トレに伴う頸動脈コンプライアンスの低下を抑制することが可能であることが示唆された。
http://www.linkdediet.org/hn/modules/pico/index.php?content_id=166


筋力トレーニングを実施する際の血圧上昇は若者より中年者の方が小さい
http://www.linkdediet.org/hn/modules/pico/index.php?content_id=315


レジスタンス運動に対する昇圧応答と中心動脈圧緩衝機能の適応
河野 寛 Kawano Hiroshi
抜粋
>筋力トレーニングのみを行う場合、動脈機能に好ましくない影響を与える可能性は排除できない。つまり、筋力トレーニングによる動脈コンプライアンスの低下が真に循環器疾患のリスクなのか、または生理的適応なのかは明らかでない。したがって、筋力トレーニングによって引き起こされる動脈コンプライアンスの低下がどのようなメカニズムで引き起こされているかを明らかにする必要がある。
http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/28822/1/Gaiyo-4662.pdf


Greater age-related reductions in central arterial compliance in resistance-trained men.
Miyachi M, Donato AJ, Yamamoto K, Takahashi K, Gates PE, Moreau KL, Tanaka H
抜粋
>レジスタンストレーニングは筋力の増大に有効であり,中・高年における健康つくりに欠かせないトレーニングの一つである.しかしながら,高強度レジスタンストレーニングによる動脈コンプライアンスの低下を抑制するために,レジスタンストレーニング行う場合には,同時に有酸素性トレーニングを行うことが推奨される.
http://exdb.health-net.or.jp/bunken/detail.php
(すみません、直リンクが張れないです。
 http://exdb.health-net.or.jp/index.html から入ってください)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12511542?dopt=Citation
(これは同じものの ncbi ですが、日本語がありません。)


レジスタンストレーニングが中心動脈のコンプライアンスに 及ぼす好ましくない影響:無作為割り付け介入研究
宮地元彦 国立健康・栄養研究所健康増進研究部
抜粋
>この結果から、介入群でみられた中心動脈のコ ンプライアンスの低下は、レジスタンストレーニ ングに依存したものであることが確認された。また、介入群ではトレーニング期間に左心室の肥大指数が有意に増大し、脱トレ期間にベースラインの水準に戻った。対照群ではこの変化はみられな かった。
http://www.arterial-stiffness.com/pdf/no08/052_053.pdf


*文中に見られる「(動脈の)コンプライアンスの低下」というのは「血管の収縮性の低下」という意味です。
東京医科大学内科学 第二講座  山科章主任教授
http://www.jhf.or.jp/mediaWS/8th/index01.html


大動脈スティフネス又は大動脈コンプライアンスと血圧、PWV
抜粋
>動脈壁伸展性あるいはコンプライアンスが低下すると、弾性動脈の血圧緩衝作用が低下し、 左図下段のように収縮期血圧の上昇、拡張期血圧の低下、脈圧の増大となります。
(Arterial stiffness No.6 p64より引用)
http://www.colin.omron.co.jp/cis/pdf/3.pdf
(ページが変わったようなのでリンクを外しました)

高齢者高血圧の病態生理
Laurent S, Boutouyrie P, Benetos A
(訳)小澤利男 東京都老人医療センター名誉院長
抜粋
>動脈壁硬化度の上昇は平均血圧値あるいは他の危険因子の存在とは関係がない2)。"動脈壁硬化 arterial stiffness"とは,動脈系の機械的特性を表す用語であり,動脈コンプライアンスの減少度を表す。
>このように年齢をマッチさせた正常血圧者に対して高血圧者では,平均血圧の高さが壁伸展性とコンプライアンスの低下に寄与するようである。
http://www.arterial-stiffness.com/pdf/no04/021_026.pdf

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コレステロールに関してはこのような研究があります。

高コレステロール=長寿、脂質栄養学会が指針
http://hisajp.com/blog/news/2010/09/cholesterol.html

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