トレーニングプログラムの組み立て方3 トレーニングの発展段階

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 トレーニングの発展段階として一般的に考えられている例を挙げます。


1、健康状態を整える為のトレーニング
2、基礎的なトレーニング(筋力や心肺機能等の向上)
3、発展的なトレーニング
4、競技に直結する様なトレーニング
5、平行して進むもの


 この分類の仕方は人により異なり完全な定義は有りませんが、基礎的なものから発展的なものへ、徐々に競技の専門性(特性)に合わせたもの、またそれ以外へ分類するものが多い様に思います。

 これは運動選手の競技成績の向上の為のトレーニングであっても、一般の方のシェイプアップや健康の為やトレーニングでも、発展の段階としてはどれも同じといえます。

 レジスタンストレーニングを本格的に行うのは年少期では難しいです。
 これは骨の成長線の問題で、それを強強度のレジスタンストレーニング等で破壊してしまうと骨の成長が止まる為です。
 そのため骨の成長が終えたと思われる高校生程度から本格的なトレーニングが行えるとなります。ただし個人差が大きいため、誰もが高校1年生になったらすぐに筋トレをすべきかと言うとそういう訳では有りません。
 年少期のトレーニングについては改めて書きます。

 しかしその身体条件から先であれば、年齢を問わず高齢者の方までが、同じような発展を積みトレーニングが行えるとなります。また同じようなトレーニング効果が期待できます。


 それぞれの説明をします。


1、健康状態を整える為のトレーニング

・血液中の血糖値や中性脂肪、コレステロール等の減少

・骨や関節包の強化(筋トレやジョギングが出来る様にする)

・筋力や柔軟性、全身持久力等を含む、全身のコンディショニング

 1段階目の「健康状態を整える為のトレーニング」では、現在の身体が運動をすることで危険が及ぶような状態であれば、血糖値や中性脂肪(体脂肪)、コレステロール等を運動しても問題無い状態にするところから始めます(スクリーニング、Par-Q、リスクファクターの確認)。

 健康の為のトレーニングもこの範囲であると言えますが、体力の向上を計るにはここで整えた後に2段階目に進む方が良いでしょう。

 中性脂肪(体脂肪率)が高い場合は比較的体重が重い場合が多く、膝や心臓への負担が高いため、早い時期での減量が必要と考えられます。
 レジスタンストレーニングは有酸素運動に較べ強度な脂肪減量が行いやすいものですが、最初からそれを行うと関節を痛めたり、心不全等を引き起こす可能性もある為に、いきなり強い強度の減量は行うべきでは有りません。
 そのためこの段階では有酸素運動が主となる事が多いです。

 また、リハビリ後の復帰(リハビリとは医療用語のためトレーニング指導では使えません。ポストリハビリやリハビリ後の復帰のトレーニングの様にいう事が多いです)の為のトレーニングや、高齢者の方のウォーキング等に必要な為の筋力の向上のレジスタンストレーニングなどもこれに入ると考えられます。
 これは直上と相反する様に思われるかもしれませんが、何らかの都合により立ち上がれない人に「有酸素運動は身体に良いから歩いてください」と言っても無理な話しなので、それが出来る様な段階までの何らかのトレーニングをすることになります。
 これらの段階は状況に応じたものとなり、一概にいえるものでは有りません。
 
 
 
2、基礎的なトレーニング(筋力や心肺機能等の向上)

・筋力の向上(筋肥大、筋出力の向上や、筋持久力の向上)
  ーー> これは低速筋出力トレーニングに分類されます。

・全身持久力(心肺機能)の向上

 健康状態が問題ない場合は、2段階目の「基礎的なトレーニング(筋力や心肺機能等の向上)」から行えるとになります。
 また、この中でも筋肥大(10RM)のような基礎中の基礎のようなものから始め、筋出力の向上(1 ~ 3RM 程度)や筋持久力の向上(20RM)はその先にすべきものです。
 そのため、全くの運動をしていない女性の方に「筋肥大をしたくない場合は筋出力トレーニングを勧めます」というのを時に見かけますが、あまり適切でない順番と私は考えています。

 これは、基礎的なトレーニングの中でも、筋出力の向上トレーニングのような強強度の負荷に分類されるものは、骨格や関節や、筋肉や腱等に負担がかかる事が考えられる為です。
 また、筋持久力のトレーニングは内分泌系に働きかける要素が筋肥大強度より弱いと考えられ、最初の時点であまり効果のないこの強度を行うのでは、有酸素運動程度の効果しか得にくい為にこの段階で必要ではないと考えられる為です。

 全身持久力とは簡単に言ってゼイゼイしないで運動(トレーニング)が継続できる様になる事です。これは考え方によっては1段階目に入るといえます。

 また、競技の為のトレーニングを目的としない場合、例えばビルディングやシェイプアップの場合は、この2段階目までの範囲でも目的を達成できるだろうといえるでしょう。
 
 
 
3、発展的なトレーニング

・筋パワー向上トレーニング(最大限の出力を短時間にするためのトレーニング)

・全身統合トレーニング(クリーン等で全身の筋肉を一度に出力させるトレーニング)
  ーー> これら2点は「高速筋出力」のトレーニングに分類されます。

・プライオメトリックス

・スピード系トレーニング
 アシスタントランやレジストランなど、オーバースピードや負荷を強要するようなラントレーニングの類い
 アジリティ・アンド・クイックネス(動きのある中での方向転換や、静止状態からのスタートなど)

・最大酸素摂取量(Vo2Max)の向上

・間欠的持久力の向上


 この3段階目の「発展的なトレーニング」と題したものには、そのトレーニング自体が強度な為に、それに耐えられるだけの体力が無いと出来ないものと分類しています。
 これらは強強度なトレーニングが多いため、体力が無いとそれだけで怪我をしてしまいます。
 これらは比較的トレーニング道具を使ったもので、競技の道具を使うものでは有りません。

 また、最大酸素摂取量(Vo2Max)が前の段階の「全身持久力」と混同されて分かりにくいものですが、最大酸素摂取量(Vo2Max)は、酸素を摂取できる上限値を向上させる事なので、すでにある範囲内で行う「全身持久力」と較べるとトレーニング強度が遥かに高くなります。
 また、競技の為のトレーニングでは「kg あたりの最大酸素摂取量(Vo2Max/kg)」で捉えるのに対し、いわゆる健康運動では「全身の最大酸素摂取量(Vo2Max)」で捉えます。後者の場合は体重が増えると摂取量は増えますが、どちらかというと「全身の酸素保有量」に近い考え方になります。
 そのため健康運動でいう「全身の最大酸素摂取量(Vo2Max)の向上」は、別段特別なトレーニングはしないとなります。
 これらの点はそれぞれ異なるので、混同しない様にして下さい。

 間欠的持久力とは、サッカーのような競技で必要とされる持久力のタイプです。中、長距離走はレース展開を別にすれば自分のペースで走れるものですが、サッカーのような競技では状況次第で「走っては止まり」を繰り返し、それがどの程度継続するかは自分では分からないです。
 そのような際に必要とされる持久力のタイプです。
 これは4段階目とする考え方も有ります。

 この3段階目の辺りから競技をしない場合にはあまりしない(必要のない)タイプのトレーニングとなります。
 
 
 
4、競技に直結する様なトレーニング

 4段階目の「競技に直結するようなトレーニング」とは競技特性に合わせて行うトレーニングで、私の考えるところでは前の3段階目の辺りからの関連性や発展性が高くなってきます。
 この内容は一概に言えず、競技特性や本人の状態に合わせ組み立てるものです。

 トレーニングの道具は競技の道具に近いものを使う事が多いですが、「重いバットを振る」ような「競技と同じ動作に負荷をかけて行う」という事は現在ではほぼしません。
 またこの段階は競技練習との兼ね合いが重要になります。
 
 
 
5、平行して進むもの

・バランスやコーディネーション(コオーディネーション)など

・柔軟性(ストレッチなど)

・怪我の予防の為

・必要により減量

・その他(視力、メンタル、動作解析などの直接のフィジカルの向上とは異なるもの)


 5段階目の「平行して進むもの」はいまある体力をそれぞれの必要性に応じて向上させていくもので、今までの4段階の様に「前の段階をしないと次には進めない」という性格のものとは異なるものです。例えば

・バランスは、体幹スタビリティーなどを含むものです。立てないと歩けませんが、立ったり歩いたりするにはバランス神経も必要ですし、その為の筋力も必要となります。どれが先に有るというものでは有りません。

・コーディネーション(コオーディネーション)とは、全身のコントロールを上手に行い物事を進めるような事で、例えばサッカーで相手を避けながらドリブルを続けるような事を指します。人ごみを歩くような事もこれに含まれます。

・柔軟性では、固すぎる関節は長い距離を歩くだけで故障に繋がる可能性がありますし、レジスタンストレーニングに必要な柔軟性なども指す場合があります。筋肉そのものの柔軟性という見方も有ります。

・怪我の予防の為とは、生活や競技は慣れや競技の特性上、ある特定の運動や刺激を重ねる事があります(ゴルフの一方向の捻り、野球のピッチング、コンタクトスポーツ、長距離走のような長時間続く刺激)。
 そのような場合、身体の特定の部位に負荷が掛かる事が多くその部位の故障や怪我に繋がる可能性があるため、それらの予防に向けて行うものです。

・減量は前述した様に体脂肪率が多すぎれば段階を問わず減らす必要が有るでしょうし、審美眼的な要素を要求するのであれば適時必要となります。体重制競技の場合は絶対的な体重の減量が必要となります。

・その他(視力、メンタル、動作解析などの直接のフィジカルの向上とは異なるもの)は、それらのトレーニングにより競技成績の向上につながったり、体力の向上につながるものと考えます。

2014/10/28 改訂
2009/1/6 初版

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